2021年07月21日

なつくもゆるる 感想

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制作 :すみっこソフト(公式サイト)
ランク:B

重力を持って世界の終わりを凌駕するSF。
重力を題材にすることが如何に危険であるか分かる作品。
※後半ネタバレ有

【攻略順】

選択肢が追加されていく形式の1本道です。

【感想(概要)】

〇重力を使った人の設定
序~中盤にかけての重力を使ったキャラクター設定は見事です。これが人という種の中でどうい影響及ぼすのか、大胆でありながらも説得力を感じるよう緻密に構築されています。

△説明過多
中盤以降物理学に置ける重力の説明が入ります。後の展開を考えると避けては通れませんが、不必要なことも説明をしているというか、説明の取捨選択に失敗しているように感じました。

△キャラクターの掘り下げ
妃佳、りねは十分だと思いますが、紫稲、ユウリについては先に説明した重力の説明と戦闘シーンに尺を取られ、関係性の掘り下げが足りていなかったと感じました。SFといってもヒロインありきですので、そこが不十分だったのは勿体ないところです。

【まとめ】

序~中盤にかけては手放しで賞賛できます。ですが重力の説明フェイズになってからは未知を仮設で説明し、それが連鎖している物理学の難解さに振り回されていてるように感じました。

常人にとっては、理解し難い頭のおかしい仮説が飛び交う学問なのですから、必要最低限の説明に留め、その分ヒロインとの関係の掘り下げに、尺を割いた方が良かったかなと思います。(ちなみにこの分野を説明するなど無知な私には無理です)

ですがこの作品の根幹の思想は個人的に好きなものですし、最後の演出も前作と比べて良くなっていると感じましたので、人におススメはしませんがそれなりに気に入った作品です。
※以下はネタバレ有感想です。







感想(各ルート)

■当麻 姫佳
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天使を彷彿とさせる見た目と丁寧な物腰。しかしその心に義兄への異常な愛を持つイケナイ妹。

もっとも文字通り命を救われているので、命の恩人に恋するのは正常と言えば正常です。あれだけの事件で、姉を嫌い程度で済ませられるのも凄いですがね。自分なら考えたくもない存在になると思います。

本ルートでは、恐怖を与えるが側と受ける側が、人の中に存在することが示さます。そしてそれは姫佳ほどの狂愛を以てしても感じてしまうほど、どうしようもないものであることが分かります。

最初のヒロインとしてのチョイスとしても姫佳は適切ですし、ルート自体は姉の打倒という目的を達しながら多くの謎を残し次への期待が膨らむ、良い導入であったと思います。


■水名 りね
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意味不明にテンションの高い、謎のぬいぐるみを肩に従える生物部部長。個人的にはこのルートが一番完成度が高かったなと思います。

やたらと語尾に使う法隆寺に意味があったのもびっくりですが、「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」をあそこまで孤独に解釈すること、ぬいぐるみがイマジナリーフレンドであったことから、彼女の孤独が並々ならぬものであることを感じました。

もはや飢えといっても過言では無い程理解してくれる人を待ち焦がれた彼女にとって、進に惹かれるのは必然と言ってもいいでしょう。りねの設定はライターのセンスの高さを強く感じます。

本ルートでは、進達マンイーターが現人類にとって草食獣に対する肉食獣であることが示されます。ですが人ほど生き汚いくプライドの高い生物は存在しませんので、草食獣の立場になれば肉食獣を排斥するに決まっています。

この辺オリジナルの要素をいれながらも、展開がごく自然で凄いなと思いました。先のルートと合わせてここまでの完成度は非常に高いです。


■鹿島 ユウリ
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トーンを一切変えずにボケる傑物である生徒会長。

進とユウリの関係は共通時点では近いものではなかったと思っています。それを作中世界設定を変化させることで、距離感を縮めるプロセスを短縮したのは、恋愛描写の過程の放棄と私は捉えます。正直2人が付き合い始める理由も強引に感じました。

というかこういうことをされると、共通とこのルートのユウリが別人に感じます。そのためこういった行為は個人的にループにおける”禁じ手”だと思っています。

またルートとして重力使い焦点が当ると思っていたのですが、重力の講義ばかりで肩透かしでした。無論重力の説明は避けて通れませんが、もっとざっくりとしても良かったと思います。どうやればいいか私には分かりませんが、少なくとも単一宇宙仮説と先進派はいらなかったと思います。

予知の話はあんなけ引っ張っておいてワームホールの存在に利用しただけですし、説明ばかりな印象が多いのでこのルートの評価は正直低いです。


■狭霧 紫穂
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黒に映える銀色の髪を持つイヌ科の女の子。人類の最後のあがきにして最終観測者。

見た目は目茶目茶好みです。というかアヘアヘ紫穂ちゃん可愛すぎます。こんなのロリコンじゃなくても宗派変える。そんな子が痴女ルックで拘束プレイ可とか、手を出さない方が失礼というか無理でしょ。

ルートについてですが、序盤はボケまくりなせいでテンポが最悪です。世界の真実を知りたいのに探索パートが長すぎます。また真実が語られるタイミングも唐突で緩急が良くありません。肝心の真実については、グラビトンのヤバさは理解していますので、スケールが大きくとも納得の行くものではあるのですが、全体としてみると感触は良くなかったです。

終わりゆく宇宙でのデートとか最高にエモいシチュなのですが、ヒロインとの恋愛描写が足りなさすぎるせいで上手く活かせていません。ループする進を見守る紫穂の視点とかあれば大分違うんじゃないかと思うんですけどね。

ですが別宇宙に行く直前の「一番努力した奴が報われないのは嘘だ」は私が大切にしている思想の一つですし、最後の紫穂ちゃんのCGも気合が入っています。そしてタイトルに戻ると紫穂ちゃんが笑顔になってるんですよね。こういう演出すごく好きです。ですから荒いなと思いながらも嫌いになれないんですよねこの作品。


■余談

<心の正体について>
最後のホモ・サピエンスが心だけの存在であったことを考えると、グラビトン=心という仮説がなりたちます。作中で言及されたわけでは無いので個人的な考察に過ぎませんが、この考えは最高に夢がありクールだと思います。

なにせ心が何か不明なのも未発見のグラビトンであれば説明がつきますし、寿命が無限大なので人の意思は永遠に残り続けるという浪漫もあります。そうであるならば、別宇宙に移動しても紫穂を発見できるのは、不思議でもなんでもなく道理ですらありますね。

posted by paurun at 06:25| Comment(0) | ランクB | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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